カムイエクウチカウシ山


毎年恒例になりつつある夏の北海道。でもまとまった休暇を取れる部署である必要があるから、当たり前のことではないのだ、と異動がそろそろ迫っていてふと思う。いまからそんな心配をしても仕方ないので、何はともあれ北の大地へ。また新潟から船に乗って、小樽入り。今年は8/3(月)から始まる週を丸ごと休暇にし、また計9日間の休みを錬成した。お盆休みがない勤務先なので、これが少し早めの夏休みとなる。
まずは前半戦、ニセイカウシュッペ山(ニセカウ)とカムイエクウチカウシ山(カムエク)のパート。


8/1(土)朝、新潟までバイクを飛ばし、新日本海フェリーのらべんだあ号まで。いつも土曜の便に乗るからか、あざれあとらべんだあで交互の配船のはずなのに、4年連続でらべんだあに乗っている。


晴れと曇りが交互。出発時に新潟が曇りの年は北海道が晴れる傾向あり。(自分調べ)


部屋はいつも通りアウトサイド。お盆前だからか予約も取りやすかった。らべんだあは大浴場にサウナがあるのでありがたい。


フェリー飯。(ジンギスカン定食と油淋鶏。3,000円以上する。いや高…)


8/2(日)、早朝4時半。船は小樽に到着。新潟-小樽便を毎回使うのはこの到着時刻の勝手の良さがある。大洗-苫小牧のさんふらわあだと苫小牧の到着は昼過ぎか夜の二択で、こうなると初日が動きにくい。朝4時半に着いてくれれば、到着日をほぼ丸ごと全部使えるというのが大きいメリット。


そして一路バイクをかっ飛ばし、一気に旭川方面へ。下船早々、わざわざ高速道路まで使って200キロ以上を走るライダーはそうはいないでしょう。高速は旭川で下りて、上川までは国道で。上川のセイコーマートに寄り道し、フライドチキン初め。

上川市街から遠軽方面に国道を逸れ、少し先のところで右に分岐するとニセイカウシュッペ山への登山口に着く。昨年夏は林道が崩落してしまい通行できず、したがって登山もできなかった山。今年は無事に林道が開通したとのことで、初日の行先に持ってきた。


今回の北海道のメイン目的地は日高山脈方面になるので、このニセカウだけ位置が外れているというのが移動効率上かなり厄介だったけど、そうやって後回しにしているといつ林道がダメになってしまうか分からないので、登れるときには多少の無理をしていかないといけない。林道をガタガタ走ること30分程、駐車スペースに着くも大混雑で、なんとか路側のギリギリのところに停めた。


前半、樹林帯はここ数日の雨のせいか泥濘んでおり、すぐに靴がドロドロになった。心を無にして歩くこと1時間弱、視界が開け始め、青空と太陽光が目に入るようになる。前方に見えるのはおそらく大槍。日焼け止めを塗り忘れたことに思い至るも、荷物を下ろすのが億劫なのでそのまま歩き続けた。


お花の綺麗な山でもある。黄色系のみならず、チシマギキョウ、チングルマ、名前の分からぬ青色系の花、、などなどが道脇を彩っていた。


駐車場の混雑を裏付けるように登山者の数は多く、何度か追い越しをしつつニセカウの頂上に到着。ガスをまとったり、しばらくすると流れたり、というサイクルがあったなかで、ちょうど視界の良好なタイミングで到着できた。


ニセカウの付属峰のようになっている大槍。この大槍が、ニセカウの頂上手前から見るとなかなかワイルドな姿をしていて、格好良い。奥が旭岳を始めとする大雪山系と思われるも、こちらは雲の中。


ニセカウとセットで登る人が多い、隣のピーク。これはアンギラスという名前らしい。ポケモンみたいな名前。(それも600族とか強いヤツ)
自分も往復してみたい気持ちがあったけれども、ピストンにそれなりの時間を要するらしいことと、この後の移動のことを考えると時間的に余裕があるとは言えず、断念。大槍の上に登るだけで我慢した。(大槍なら10分程度で往復できる)


樹林エリアはこんな感じ。大槍に登ったのが余計だったのか、2時間台での往復はできず。なんとなく悔しい。


一気に場所が飛んで、中札内の道の駅へ。上川からは層雲峡、糠平湖、上士幌、士幌、音更、帯広とこれまた大移動を続けて、一気に日高山脈エリアまで南下してきた。晴天の三国峠に見向きもしない。(そんなライダーはおかしい…)

中札内の道の駅は去年も訪れた。去年はここでカムエクの断念を決めて、浮いた時間の処遇をどうしたものかと悩んだ記憶がある。そのときに食べた唐揚げ串がまた売っていたので今回も購入。大きくて美味い。今年は「行くぞカムエク」の踏ん切りを付ける場所となる。

去年の屈託についてはこちら: 余市岳


水の量も悪くない。例によって札内川ダムのリアルタイムデータをチェック。ピョウタンの滝周辺までしか電波が入らないので、確認タイミングには注意が要る。水量の目安については去年同様このサイト(https://yukinoshingun.com/kamueku-toshou/)を参考にした。


去年は下見するだけで終わってしまった札内川ヒュッテ。去年、カムエクには2日連続で晴れる日の、2日目の方で登りたい、みたいなことを書いた記憶があり、今年の8/3はまさにそういうコンディションが見込まれた。それがゆえの初日の大移動。


ヒュッテの1階はこんな感じ。利用者は自分以外にはゼロ。ヒュッテ前の駐車スペース(および幌尻ゲート手前の駐車スペース)に車が複数台停まっていたので、皆さん普通は車中泊で時間調整するのだろう。


なんと2階が畳敷きだったので、ありがたくこちらを使わせていただいた。
ヒュッテにはトイレもあり、車中泊民と思われる人がたびたびトイレを使いに来ている様子が見えた。

8/3(月)。2時過ぎに目を覚まして、支度を始めた。いよいよカムエク登山。ローソンで買っておいた黒糖サーターアンダギー(a.k.a.カロリー爆弾)をいくつか腹に詰めて、出発。

と思いきや、ヒュッテ前で準備をしていたら、乗用車の駐車スペースの方から別の登山者に声をかけられた。羆のリスクもあるので同行願えないかとの由。登りでペース差が出てきたら先に行ってOKとのことだったので、(自分にしては珍しく)急造のタッグ登山と相成った。同行者Mさんも百名山はすでに終えられ、二百名山を巡っているとのこと。さらにこの先、七ノ沢出合から八ノ沢出合までの区間で道民のお姉さん(名前分からず)もパーティに加わり、一時的にまさかの3名体制が発足。これは自分にとっては本当に珍しいことだった。ペースのことや休憩のことなど、普段あまり考えなかったことを考えるきっかけになり、面白かった。


幌尻ゲートに到着。自分やMさんはヒュッテから歩いたがそれは少数派で、多くの人はここまで車両で乗り入れる。前日に入ったのか、当日の先行者か、すでに複数台の車が停まっていた。


しばらくは歩きやすい林道が続く。Mさんと会話をしつつ、羆に存在アピールをしつつ。


1時間強で七ノ沢出合に到着。最初の1~2本の渡渉は大したことがなかったものの、その次でしっかりとした渡渉区間が現れ、ここで沢靴に履き替えた。考えてみると、沢靴の使用は3年前の幌尻岳のとき以来。


ピンクテープを見つけたり、見つけられなくてもまあ沢沿いなら合っているでしょうの精神でそのまま進んだり、を繰り返して八ノ沢出合へ。巻道のピンクテープを見つけると正しいルートが分かって安心はするけれども、結局割とすぐに道を見失ったり、そもそも沢を遡上していく方が分かりやすかったりして、この辺はもう個々の技量や嗜好次第なのかなとも感じた。(この辺で先述のお姉さんが加わり3名体制に)


八ノ沢出合のテント場と思われる場所。沢沿いの開けたところに数張見かけた。この先の樹林の中にも数張あり、テントスペースはいくつか分かれている模様。重い荷物を持っていく分、時間に余裕を持たせて登るか、軽身で登る分、日帰りで慌ただしく登るか。難しいところ。(でもテントは重い。余程の山でなければ自分はもうテント泊登山をしない気がする…)


無名の滝(調べれば名前あるのかも)を何度も横に見かけながら、ひたすら沢を詰めていく。


八ノ沢出合を過ぎると、本格的に沢登り、というかこれもう滝登りでしょう、と言いたくなるような区間も出てくる。アルプスで見るような岩のマーキング(ペンキの目印)は全然ないので、一番正しいところを登れているのかは常に不安。小まめにGPSを確認する必要がある。この辺で少し登りのペース差が出てきたので、3人連隊は解消し、先に行かせてもらうこととした。(Mさんとお姉さんはその後も一緒に登られていたご様子)


こんなところも登っていく。(でもここは本当は右に巻道があって、敢えて沢を詰めなくても登れた場所ではあった…ような気もする)


長い長い沢登りの果てに、ようやく八ノ沢カールに到着した。それまで勢いよく流れていた沢の音が一気に止んだかと思うと、この展望。羆がよく出没する場所らしいので一抹の不安はあるものの、それを上回る景色の良さにしばし絶句。


黄色いお花のプチ・アーチ。


カールにある福岡大ワンゲル部のレリーフ。カムエクと言えば、で未だに一番初めに出てくるのはこの事故。往路で羆に遭わなかったのも偶然でしかない、とあらためて緊張感を持つ契機になる。


若干の雪も残っていた。カールの左の方から巻いて主稜線に登り、そこからカールの上のピークを目指していくルート取り。


存在感のあるヨツバシオガマ。緑のなかに映えている。


主稜線に到着、ここからはあと300m程標高を上げるだけ。ふと気がつけば靴を履き替えることなく、沢靴のままここまで来ていた。三股か、カール到着のタイミングで沢靴を脱ぐ人が多い模様。ただ沢靴のままでも主稜線への登りは特に支障がなかったのと、沢靴は脱ぐのが面倒くさい(スポッと抜けず、時間がかかる)ので、そういうズボラな人には履き替えないという選択肢もある。実際には、三股で沢靴を脱ぐのは少し早いとも思う。その先にも足が水に浸かるシーンが複数回あったので。


カムエクの反対側、ピラミッド峰。分かりやすい形をしている。


頂上手前に両脇をお花が彩る区間があり、これもまたビクトリーロードのような装い。チシマフウロを始め、赤や黄色の花も一緒に登山者をお出迎えしてくれる。


遂に到着、カムイエクウチカウシ山。言葉は無用の、とにかく絶景!

なんとか9時前に登頂し、この展望を独り占めできた。日高山脈は幌尻岳以来、2座目。周囲の山々の名前が全然分からず、歯痒い。幌尻岳すら分からない。あれが幌尻?あれがペテガリ?どれが神威?など一人であたふたとしていた。


こんなに晴れるなんてー。去年、微妙な天気のときに登ってしまわないで大正解。あの撤退にも意味があったのだ。

頂上でゆっくりしていると、なにか張り詰めたものが切れたのか急に空腹を覚え、持ってきた炭水化物系の食材を黙々と腹に入れた。食後もしばらく景色を見たり写真を撮ったりで時間を使い、気がつけば30分弱も滞在していた。


シカシナイ山とか…そっちの方面と思われる。


幌尻岳方面…と思われる。


頂上では電波が入ったので、ここでダム流入量を再度チェック。かなり減っていた。(大体7m3/sくらいなら渡渉に支障なし。4~5なら易しい)


お花畑区間にもお別れ。険しいだけではない、こんな柔らかい一面もカムエクは持っていた。


帰りもまた長いので、これ以上の長居はできない、ということで下山開始。ピラミッド峰にも立ち寄りたかったが、藪漕ぎ必至のようで時間もかかりそうだったので撤退。


帰りは沢下り、ならぬ滝下り。こんなところ登ってきたっけ?という恐ろしい区間もちらほら。なんとかフェルト地の沢靴がグリップしてくれる箇所もありつつ、普通にズザザと滑るところもありつつ、転ばないのが奇跡という感じで下っていった。

実は登りの途中でニコンZ6IIのレンズキャップを沢に落としてしまっていて(渡渉中にバランスを崩したときに衝撃で取れた模様)、水に流されたらもう無理かな、、とほとんど諦めていたのだが、下山中にスライドした方が拾ってくださっていた!! 本当にありがとうございました。


無限に感じる沢下り。なんだか登りよりも精神鍛錬という感じが強い。おそらくこの要因には沢靴の問題があって、ソールが薄い分、歩く度に負荷がかかっている、それの繰り返しで気持ち的に参りやすい、というのもあるんじゃないかなと分析している。岩の上を繰り返し踏みつけていく、しかもそれが下りで体重が乗っている、となると足にかかる衝撃もそれなりのはず。少し進んでは、早く林道に着かないかなぁとGPSを恨めしく眺める。

 
ようやく帰ってきた林道突端。自転車がたくさん並んでいた。似たような自転車が目立つので、レンタルの人も多いのかな。トレランシューズ、アカシャIIに履き替えると、これも薄い靴ではあるはずだけど、ソールはやっぱりしっかりしているみたいで、足元の安定感(痛くなさ)は段違い。林道歩きはもはやオアシスのようですらある。



羆情報: カムエクでは糞を見かけたのみ。日数は結構経っていそう。林道上で1つ、あとは七ノ沢出合から八ノ沢出合までの区間にも1つ~2つ糞が見つかった。糞だけで、気配や臭いは感じず。


かつての道道整備の痕跡がうかがえる、やけに立派な橋。他にもスノーシェッドが急に現れたり。


幌尻ゲートに帰ってきた。沢下りが長かった分、林道は気持ち的には一瞬だった。車の数は朝より多く、明日にかけて登ろうとする人も多いのかなと思われる。


ヒュッテまでの追加歩きもこなし、バイクに戻ってきた。荷物を片付けていたら現れた、ミヤマクワガタのメス。上手くピントが合わなかった。


中札内市街へ戻っていく。「熊横断注意」の看板。横断すな!

中札内から更別に抜けて、更別のセイコーマートに立ち寄る。ソルティライチとライムソルトとマスカットのソフトクリームを、一気に腹に放り込んで、水分と糖分を補給した。至福の瞬間。ほんとーーーうにウマい!

この日は更別の先、忠類に宿を取っていたので、もう少しだけ移動。なんとか17時前には到着して、温泉とサウナでリフレッシュ。長い一日だった。洗濯をし、次の山行の登山届をまとめ、写真を整理し、仕事の状況を軽く確認する。片付けることが多いものの、向こう数日まだまだ晴天が続きそうなのは朗報。たっぷりと眠って、次の山に備えるのであった。

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