高塚山・黒法師岳

難関の三百名山と言っていい、はずの黒法師岳。加えて、今年から送迎バスのツアーがなくなってしまった高塚山も地味に難度が上がっている。これらを寸又峡温泉から周回して歩く、いわゆる深南部ゴールデンルート(って呼ぶんですかね?)。犬山段の休憩舎泊まりで、時計回り縦走してきました。


快晴予報の土日。風も弱く、最高の山日和でした。寸又峡温泉まではバイクで移動。200円/日の駐車スペースに停めて、小銭がなかったので500円玉を投入。これで翌日までの停車はOKでしょう。
3時半に起きたのに、やっぱり移動には時間がかかって、8時半過ぎの寸又峡到着。なんとか9時前には歩行開始となりました。

時計回りだと、沢口山までは登り一辺倒。テント泊装備ではないもののザックはそこそこ重く(ここしばらくは軽荷で中距離が多かったので尚更)、ペースはあんまりかな?と自分でも思いながらの歩行でした。樹林のなかの富士見平を通過。富士、見えない。

沢口山に到着。ザックを下ろして一息。好天のおかげで暑く、手持ちの水が足りるのかいきなり心配になってきた。2L弱あるものの、次の水場は翌日のバラ谷になってしまうので、あと24時間くらいは手持ちの残量で耐えなければならない。渇水感を覚えながらも、ちびちびと大切に飲んでいく。

基本的に森の中の歩行という様相ですが、ところどころツツジが目立つ区間もあって、目が安らぎます。

板取山に到着。沢口山までは登り一辺倒、そこからは少しアップダウンが続くような山道で、距離の割には疲労感も多め。板取山の手前、天水では数パーティに遭遇しました。寸又峡からのピストンなのか、この後の行程(山犬段休憩舎でも)ではエンカウントせず。

板取山からずっしりとした存在感で見えるのが前黒法師岳。これで「前」の付く前衛峰なのかというのが本当に意外に思えるほどの迫力がありました。

急に人工感が出てくる、八丁段の手前。八丁段のピークを踏んで少し下ると林道に合流、歩きやすくなります。

最初に出てくる立派な建物は、静岡大の演習林の宿舎。すごいところに拠点があるものだ、と寸又峡から歩いてきた身だと感じますが、本来は大井川沿いの田野口あたりから車道/林道で山犬段まで来ることができるので、意外に難アクセスということでもないのかな。

静岡大の宿舎の少し先、山犬段の休憩舎。トイレもあります。水場があれば尚良し。トイレの手洗い水道は雨水を貯めたもののようで、飲用には不適。

休憩舎の中。広々としています。今年は運行がないものの去年までは登山ツアーで定期的に車や人が入っていたこともあり、川根本町の観光パンフレットがセットされていたりして、妙なところで深山感がない。シュラフとマットを広げて、荷物を軽くします。

軽いザックにしたら、この日のうちに高塚山に行っておこうということで出発。翌朝の分まで含めると休憩舎から高塚山分岐(三合山)までの往復を余計にすることになってしまうのですが、分岐から高塚山までの往復だけでも翌日の歩行距離を減らせればベター、と考えた末。休憩舎は全体の行程でも前半寄りに位置しているので、2日目の負荷を減らすことは重要。高塚山の頂上は樹林の中にありました。三百名山の96個目。

高塚山から休憩舎への帰り。行きと同じ道(蕎麦粒山経由)はつまらないと思って、林道経由にしたらこれが大ハズレ。というか歩いてはいけなかった。林道なら歩行時間もセーブできるのは?と薄っすら期待もしていたのですが、崩落激しく、全然そんなことない。

一番肝が冷えたのはここ。崩落によって元の林道の姿は跡形もなく、かなりの急傾斜の中をトラバースするような格好に。ガラガラと粒の大きめな岩・砂が流れて、時折上からの落石もある。四肢を大活用して何とか突破しましたが、足元の砂礫が崩れていったらそのまま谷底に吸い込まれるだけなので、歩くべきではない。

と、いうのが息絶え絶えになりながら戻ってきた休憩舎の窓に貼り紙で書かれていました。これに事前に気が付いていれば。山犬段の広場の看板では、林道から五樽沢や、その先の千石平まで行けるような表示になっています。

水の残量に気をつけつつ、休憩舎で夜を明かす。夜は録り溜めていたアニメを消化。あかね噺の進路相談の回でうるうるしたり。
朝は早く、2時半には起床して、まだ暗い中を歩行再開。長い一日になりそうなので。前日の教訓もあり、大人しく蕎麦粒山経由で高塚山分岐方面へ進んでいきます。

いまが一番日の長い時期。もう4時前後には周囲が白み始めて、深南部の山々の輪郭がはっきりとしてきました。三合山付近から北方向を望む。どれがどの山というのは分からない。

高塚山分岐から北が一応破線ルート、バリのような扱いになっていて、確かにところどころはルートが不明瞭。最初のうちはくるぶしくらいの高さの藪が張り出ていて、基本的には踏み跡が分かるのでそれをフォローしていきます。前日よりは明るい森林という感じが強く、ちょっと怪しい道に入ってもGPSを確認すればすぐに復帰できる、そんな塩梅でした。

富士山のシルエットの向こうから朝日が登場。

森の中がオレンジ色に染まっていく。色の変わる山肌を見るモルゲンロートも良いけれど、こんな風に樹林のなかで色の変化を感じるモルゲンロートもまたなかなか好みです。

千石平に到着。ところどころに幕営に良さそうな地点もあり。またここらへんからスライドする登山者もちらほらと出てくる。同じルートを逆まわりで歩いているのだろうか。

木々の隙間から射し込んでくる朝の日差し。まだ気温もそれほど高くなく、一番心地のよい時間帯です。

ところどころでは視界がよく開けて、深南部から西の方向、あまり馴染みのない山域が見渡せるように。鋸山(名前の割にあまり鋸っぽくはない)の先くらいから、足に当たる藪の高さが少し増して、また朝露で濡れている笹薮の割合が急に高くなって、ついに靴下から浸水。スパッツがあった方が良かった。でも一度濡れてしまったら仕方ない、じっとり、どころかザブザブ濡れているようなレベルになりながら、そのまま歩く。

房小山に到着。自分が持っている「山と高原地図」では、ここまでが破線、ここから北はバラ谷の頭までルートにすらなっていない、ものの踏み跡は引き続きそれなりに残っていて、そこまでルーファイ力が必要というわけでもない。水に加えて食料の残量もなかなか厳しく、セーブしながら歩いていた。ここで一息、残していたおにぎりを腹に入れる。

初夏というよりはなんだか秋口のような風景。空も高いし、心なしか草紅葉しているような色だし。

房小山からバラ谷の頭までの景色が、この縦走路での最大の見所。進行方向と反対側の景色なので、振り返り振り返りしつつになる必要はあるけれども、そうして後ろを見たときにあっと声に出るような明るい山々の眺め。立ち枯れしている木々もまた良い雰囲気を出している。

空気も澄んでいて、良いものです。

バラ谷の頭の手前、この辺りに日本最南端の2,000m地点があるはずだ、と思いながら歩いていると、木に掛けられた看板のようなものを発見。これか?と思い一応カメラに収めておくと、

その少し先にもっと綺麗な看板が出てきた。ここから南に、2,000m以上の地点は存在しません。石鎚山とか宮之浦岳とか、惜しいのはあるけれど。

バラ谷の頭に到着。水窪のダムの方、野鳥の森からの登山ルートと合流します。が、それによって道が歩きやすいものに変わるということはあまりなく、この先も普通に藪をかき分けながらになるパートはあり。

おにぎり型の綺麗な山の姿が並びます。左から黒法師岳、富士山、前黒法師岳。(たぶん右のは前黒法師岳で合っているはず) バラ谷の頭まで来れば黒法師岳は割と近くに見えて、ようやくここで一段落だという安堵感が強い。

急傾斜を一旦下って、その後また黒法師岳に登り返していく形になります。踏み跡は明瞭ながら、これが結構ずるずると滑るような地面で、傾斜も大きいのでなかなか気を遣った。

一時的に尾根を逸れて、バラ谷の水場へ。よく出ていました。冷たくて美味しい。水はこの時点でほとんど残量ゼロだったので、結構危ないところでした。2L弱をたっぷり詰め込んで、出発。

黒法師岳への登り返し、ラストスパート。この登りもまた傾斜がきつい。勢いを付けてぐんぐん登っていく。

そして遂に到着、黒法師岳。頂上には南アルプスでよく見る団子式の山頂標がありました。すぐ隣に三角点があり、どうやらこの三角点がなかなか珍しいもの(十の字ではなくバツ表記になっているとか)だそうで、そちらの写真を残さなかったのを後悔。山頂そのものは樹林の中にあって、景色はありません。

丸盆岳への分岐を少し進んだところは景色が開けているので、こちらに移動。計画段階では丸盆岳への往復もしてみようと考えていましたが、食料の残量的に厳しそうだなと考えて、ピストン断念。水はバラ谷でたっぷり補給できたのですが、追加1.5時間の往復をするには手持ちのカロリー量がかなり心許ない。

丸盆岳と、その向こうは聖岳。まだ見て分かるくらい雪が残っています。近いうちに百高山で大沢岳に行こうと思っているのですが、まだ残雪装備がいるのかなぁ。丸盆岳は近いようでなかなか遠い。鞍部からの登り返しが往復ともに結構キツそう。

大人しく黒法師岳から寸又峡への下山を開始。序盤はルートが不明瞭でなかなか難儀する(GPSとのにらめっこ必至)ものの、時折目に入るピンクテープを頼りになんとか進んでいきます。ふと目線を上げたら、鹿の頭部の骨が木に引っかかっていて、ビックリ。

二ツ山の先、開けた場所に出ると前方に前黒法師岳の雄姿が現れる。前日と同じ、これで前衛なのかと驚く感想を持ちます。

この広場周辺は一時的に歩きやすい路面になって、どうやら昔に開発が進められていた林道の名残のよう。こんな山奥の奥の奥まで開拓されようとしていたのかと驚くばかり。いまでは半分打ち捨てられているような感じで、倒木や落石がところどころにあるのはご愛嬌、それでも比較的に歩きやすいことに変わりはない。

昨日歩いてきた縦走ルートの方角を見渡す。森林の、南アルプスっぽい景色。深南部って一応南アルプス扱いでいいんだよな?などと考えたりもしつつ。

最後の苦しい登り返しを経て、前黒法師岳に到着。ここにも団子の山頂標がありました。ここまで来れば、あとは基本的に下るだけ。丸盆岳をスキップしたので時間的にだいぶ巻けており、心にも余裕が出てきた。最後の行動食、チョコパンを腹に収めます。

白ガレの頭でやや平坦になるものの、基本的にはひたすらの下り。無心で下りていくのみです。引き続き人には出会わない。最近はまた熊の話題が多いですが、野生動物の気配もあまりなく、稀に鹿がバタバタと逃げていく音が聞こえるのみ。

車道に帰ってくると、一気に人里の感じが増します。というのも寸又峡の吊り橋巡りをしている観光客が多いので。写真の飛竜橋、また夢の吊り橋と橋が2つあり、せっかくだから夢の吊り橋から帰ろうと歩を進めました。が。

夢の吊り橋が一方通行規制(寸又峡⇒山方面)になっているのを、渡りきってから知る始末。すみませんでした。山から寸又峡方面に向かう橋の入口には規制の表示がなく、橋を抜けたあとに知って焦った。すれ違い地点が橋の上に2か所あったので、両側通行前提なのかなと思っていたのですが。またハイシーズンだと、一方通行であるうえで、さらに通行2時間待ち?とかになることもあるようで、もしそのレベルで待ち客がいたら相当叩かれていただろうなと思い冷や汗。平日ならいざ知らず、週末であれば下山者は飛竜橋から帰りましょう。

夢の吊り橋に入るときには500円の支援金?が必要になるみたいですが、これは入場時の徴収のようなので、山を抜けて降りてくる場合は払わずに通過できてしまうというバグ。いいのかな?と思っていたのですが、係員の方には「いい写真撮れたかい?」と話しかけられたのみだったので、はいとお返事してそのまま駐車場方面へ。手前の商店に立ち寄り、ソフトクリームをいただきました。カロリーが染みる。お茶が有名なんだから抹茶ソフトにするというのもアリだったな、と後から思ったり。

日曜の昼下がり、再びバイクに跨って、寸又峡温泉ではなく少し離れた場所にある「もりのいずみ」という入浴施設へ。寸又峡は結構賑わっていたので、場所を移したのが大正解。空いていて、露天風呂もサウナも独り占め。たっぷりお湯を楽しんだ後は、涼しい風を感じながらバイクで大井川沿いを下っていきました。

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