白色のファンタジー。
いつか行かなきゃと思っていた雪の時期の北岳。天気良く風弱く最高のタイミングを掴んで、間ノ岳まで足を延ばしたりもして、心ゆくまで楽しんできました。
2/20(金)は久しぶりの有給休暇を取得。土日どちらも天気が良さそうだったけど土曜の方がやや条件が良さそうだったのでこれを活かしたいという考えから。あと土曜スタートだと池山御池小屋が混むかも?という懸念もあり。金朝は特急あずさで韮崎へ(きゅんパス効果?で混んでいた)。駅からはタクシーで夜叉神峠まで移動、数台の車が停まっているのを横目で見つつ、ゲートを越えていざスタート。
夜叉神トンネル。入り始めはまだ外の光が入ってそこそこ視界も利くけど、
真ん中らへんに来ると真っ暗すぎてさすがに怖い。なんとなく面倒くさくてヘッデンをつけず、ほとんど手探り状態のなかを進んだ。
続く観音経トンネルは中で工事中。向こう側(広河原側)の出口は工事のため塞がれていて、外からみるとだいぶ面白いことになっていた。右下に出入り口があって、人はここを開けて通れる。
林道から見渡す白峰の山たち。名前の通りにこの稜線だけが白い。
そして下に目線を落とすと、これから向かうことになる野呂川林道が見えた。わざわざあそこまで落とすのか、そして帰りはあそこから登り返してくるのか、と うげぇ〜と思いたくなる感情が去来する。
下降点から鷲ノ住山を越えて、奈良田に続く野呂川林道まで歩いてきた。鷲ノ住山からの下りはところどころ凍結していて歩きにくく、吊橋に出る最後の区間はアイゼンを一時的に付けることになった。チェーンスパイクがあれば良かったのだけど、刃が丸まっていたから引っ越しの時に捨てちゃったのかなぁ。
野呂川林道はあるき沢橋のところまで。ここで左に折れて、池山尾根に入っていく。
鷲ノ住山の下山と同様に、池山尾根も序盤から凍結面が頻繁に出てきて、ただでさえ重たい荷物を背負った中、足下に気を遣いつつ歩くのはなかなか面倒だった。ということで割と早いうちにアイゼンを付けてしまう。標高1,500mそこらからはようやく雪が繋がるようになった。池山御池まで一息で登り、開けた視界に多分ここが池だなぁと適当な感想を抱く。
池山御池小屋。
本日はここに泊まる。なかの様子はこんな感じ。土間の一段上に板張りのスペースがあって、5~6人程度であればゆったり使えそう、10人とかになると結構ギチギチかなぁというサイズ感だった。自身は最初の到着者だったので、奥の壁沿いにマットとシュラフを広げた。その後、3人が追加で到着した。冷気が溜まっているのか小屋内は妙に寒く、シュラフでぬくぬくしている内に昼寝をしてしまい、夜も食料をつまんだ後は特にすることがないので早めに目を閉じた。
翌2/21(土)。朝は3時に動き始めて、マットやシュラフを片付ける。といっても行程は池山尾根のピストンなので、またこの小屋は必ず通る。したがってわざわざ重たい装備を担ぎ上げる必要もなく、嵩張るものたちはここにデポしていくことにした。だいぶ軽量化されたザックを背負い、3時半に登山開始。序盤は樹林帯を行くが、砂払の手前までくれば暗闇のなかでも開けた場所に出たことがわかる。
少しずつ明るくなっていく東の空と、そのなかに浮かぶ富士山の影。夜景も遠くにちらちらと瞬いている。
時間が進んで、ブルーアワー。富士山のシルエットが一層際立っている。この頃にはボーコン沢ノ頭を越えて、八本歯のコルに向かっている。
ボーコン沢ノ頭ではまだ周囲が暗く、眼の前に聳える北岳バットレスが凄いという評判を実感できていなかったけれども、歩きを進めるにつれて次第にその全貌が見えてきた。大迫力。真っ白に聳え立つ、という程ではないのは先週末も好天で少し雪が溶けてしまっているからだろうか。
難所だった八本歯のコルへの下りも無事にこなし(暗かったので写真は帰りに撮った)、振り返ると日の出。雲ひとつない晴天を確信する朝の始まり。
進む方向の斜面も次第に色づいて、モルゲンロートというほど真っ赤なようにはならなかったけれども、淡いピンク色に染まっていく姿が印象的。その中を歩いて進んでいく自分自身の影が青い色をしていたのも頭に残った。
吊尾根とトラバースの分岐地点。まずは北岳に向かうので吊尾根ルートを直進。当たり前のようにここまで書いてきているけど、ルート全体に渡ってトレースが残っていた。これは本当にありがたかった。晴天微風に加えてトレース有りというのもまた大きかった。
朝日に照らされる間ノ岳への稜線。軽荷にしたはずなのに、それでも最後の登りは苦しい。ときどき後ろを振り返って景色を楽しみつつ息を整えつつ、また歩行を再開。
そして遂に到着、北岳。北岳に2月に来ることができるとは。雪をべったりと纏う仙丈ヶ岳、中央アルプス、屏風のように長く連なる北アルプスの眺めが際立っていた。
頂上はさすがに他に誰も居らず、あちこち写真を撮りに回って、しばらくうろうろしていた。カロリー補給に月餅も一つ腹に入れる。
間ノ岳に続く稜線を背景に、いつものピッケルを突き立てた写真。
あらためて間ノ岳を眺める。登山届は間ノ岳まで行く前提で出している、でも目で見る以上に距離はある、トレースがどの程度明瞭かはこのときはまだ分かっていない、北岳への登りですでにそこそこ消耗している、でもやっぱりこれで帰ってしまうのはなんとなく勿体ない、よし行こう、とここで心を決めた。
まずは北岳山荘まで歩いて、標高を300m程落とす。トレースは残っていた。冬の時期に白峰縦走をしている猛者の皆さん、ありがとう。感謝の念を持ちつつ、上には上がいると思わされたりもする。
苦しい登り返しで、まずは中白根山へ。北岳山荘の時点から、二段階の登り(中白根山、間ノ岳)となっていることが分かるから、まだ頂上じゃないのかよー、という裏切られた感じになることはないピークだけど、地図を見てまだまだ間ノ岳まで距離があることを確認すると少し盛り下がる場所ではある。
最後まで細かく標高を上げていく。3,190mまで行かなければいけないのに、ヤマレコの自動音声が告げる標高数値がなかなかそれに近づかないからもどかしい思いをする。
そして到着、間ノ岳。日本で2番目に高いピークから、3番目に高いピークへ。
北岳と同様、独り占めの頂上。北岳も間ノ岳もこれで三度目で、北岳は割とこれまでも晴天との縁があったけれども、考えてみると間ノ岳は晴天下の景色をきちんと楽しんだことがない。初めて来たときは北岳からの移動中にガスが上がってきてしまった、白峰南嶺の縦走をしたときにはまだ間ノ岳通過時刻が真夜中で何も見えなかった。それらの過去の記憶を吹き飛ばす今日のこの青空。
ピーカンの空に目を細める。
南アルプス南部を遠望。塩見も荒川も、以前4月に農鳥岳に来たときに見たよりもやや白みが強いように見える。南部は夏でさえ遠い場所なのに、冬に行けることはあるのだろうか。なかでも聖岳は特に行ってみたい気持ちがあるけれども。
北岳に戻っていく稜線。いつも北岳側から間ノ岳方面を見遣る稜線の写真ばかり見ているような気がして、こちら側からの景色が新鮮に映った。北岳への登り返しが相当に苦しそうだということを同時に想起させつつ。
中白根山、北岳を交えて、自分の影も入れられるように無理をして撮った構図。これはカメラのホワイトバランスなどの影響もあるのだろうけど、雪の山で撮る写真に写る空の色が、部分的に暗い青(アイアンブルーという色が近い)になるのが、なんとも宇宙の色のように感じられて好きだ。ここからまた北岳山荘へ下って、また登り返し。
北岳山荘の手前で、池山御池小屋で一緒だった女性とスライド。北岳にも登ってから来られていたようで、荷物の量から推察するに白峰三山の縦走と見受けた。凄い。軽荷で妥協して、それでも間ノ岳まででヒーヒー言っている自分はまだまだだと戒める。
北岳への登り返し、吊尾根分岐(上の方。標高3,090m程)まで上げるのが嫌で、もうトラバースで行っちゃおうとしたら、こちらもなかなか苦しかった。写真はトラバースを何とか終えた後の図。トレースは弱く(というかほとんど消えていた)、基本的にはステップを切りやすい雪質ながらところどころ凍ったような場所もあり、如何せん斜度が結構あるのでドキドキしながら長い距離をトラバースするのは精神的にかなり削られた。時間も使ってしまい、これなら大人しく吊尾根分岐まで登った方が良かったかも、と反省。
帰りも八本歯のコルをこなして、ボーコン沢ノ頭へと戻っていく例の難所。登りならさして難しくはない、が見上げると結構な威圧感がある。
上から見た図。トレースがあれば足を置くべき位置がなんとなく分かるし、雪の状態も優しかったので、朝方に通過した往路(下り)でも特に問題はなかった。
ボーコン沢ノ頭に帰ってきて、これがその大迫力の北岳バットレスか、という眺め。樹林帯を細々と歩いてきて、パッと視界が開けてこの景色が入ってきたと考えたら確かに打ち震えるだろうと感じる。でもやっぱり白色が弱い。心なし朝と比べても白の面積が低下している? 雪がこの量だったから自分でも安定して歩けたという要素は理解しつつ、でももっと真っ白なのもいいよなぁと考えてしまう都合の良さ。
砂払を経て、池山尾根に戻っていく。富士山にも別れを告げる。終日快晴だった。名残惜しさはあるけれども、ここからまだ歩かなければいけない長さを考えると、あまりのんびりとはしていられない。
池山御池小屋でデポしていた荷物を回収、腹が空きすぎてハンガーノック手前まで来ていたので羊羹と柿の種を流し込み、なんとか身体をリセット。またザクザクと歩きを進めて、あるき沢橋まで降りてきた。やはりこの土日で歩こうという人が多いようで、おそらく池山御池小屋までと思われる登りの登山者と数回すれ違う。
野呂川林道を歩くこと約30分。今からこれを登るんだなぁという憎らしい鷲ノ住山の姿が見えてきた。これの登り返しが嫌で、奈良田までの12kmの歩行を選ぶ人も多いとか。夜叉神峠までなら距離は若干短く済むので、長さを選ぶか登りを選ぶかという二者択一。
登り返し完了。鷲ノ住山それ自体は樹林の山で、特に見どころはない。池山御池小屋でつまんだ食料がエネルギー変換されてくれたおかげなのか、単にアドレナリンが出ていたのかは分からないけれど、ここに来て100m/10分のペースで登ることができ、コースタイムを巻き返すことにすら成功した。夜叉神峠に至る林道(こちらも名前的には野呂川林道だけど)に復帰して、ラストスパート。
数時間前に自分はあそこに立っていた。最後に白峰の山々に別れを告げて、観音経・夜叉神の二大トンネルをくぐっていく。
夜叉神峠のゲートは閉じられていて、端っこの歩行者用通路を通って出てきた。狭く、ザックが引っかかってギチギチと音が鳴る。前日朝に見たよりも車の数は多く、この晴天の週末を逃さまいとする登山者が多いことに共感を覚える。
夜叉神トンネルを出たあとでタクシーを呼んでいたので、十数分待ったら迎えの車両が来てくれた。そのまま甲斐市にある温泉施設に行って汗を流し、予定より一本早い特急かいじに間に合ったので前倒しで東京へ帰着。
目まぐるしい一日だった。でも何よりもまずはカロリー摂取だ、ということでザックをマンションのトランクルームに放り込んで、近所の松のやへ。ささみカツ丼と唐揚げとアジフライで満足。野菜は…?
冬の北岳に行くというのは自分のなかで目標の一つといっても良い、マイルストーンのようなものだったので、まあ振り返ってみれば「冬の」という形容が相応しい冬の姿だったのかどうか(それにしては好条件過ぎたのではないか)ということは思わなくもないけれど、とにかく2月という厳冬期の期間に登れたことは事実なので、うんまあそれで良しとしましょう、と自分のなかで決着させている。間ノ岳にも行ったし。それは明確に頑張ったポイント。
次なる目的地は。冬の北岳をやってしまうと、いよいよ次は白山カレンダーの未踏分(12~3月)を埋める方向に行かないといけない気がする、でもこれはなかなか難しいなぁ。この週末は連休で、明日(2/23)の天気も良さそうなのだが何も決まっていない。さすがに今日は丸一日休養ですけども。
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