鍬崎山

北アルプス立山連峰の前衛、鍬崎山。三百名山の一つであり、冬でも富山地鉄の立山駅から歩けそうなロケーションが気になっていて、日本海側が晴れる時の目的地としてストックしていた。

金曜に富山に前乗りし、土曜朝は立山に行く一番列車に乗る。これが5時18分に設定されていて、結構早い。始発時点の乗客は自分を含め2人のみ。立山で降りるまで乗っていたのは当然と言うべきか自分ひとりだけだった。

まだ薄明の中、あわすのスキー場まで車道歩き。近道のルートは雪に覆われていて、除雪された車道を大回りして歩く3.5kmの道のりとなった。冬靴であまり長い距離の車道を歩きたくないが、こればかりは仕方ない。

営業開始前のあわすのスキー場。動かないリフトが少し寂しい。圧雪されたゲレンデは早朝の冷気にあてられてかカリカリに固く、早いうちにアイゼンを付けた。

ゲレンデトップから先、ありがたいことにトレースがあり、ルートファインディングの必要なく黙々と歩き続ける。ところどころ沈むような部分もあるが、アイゼンのままで問題なかった。念のために持参したスノーシューは、最後まで使うことはなかった。

太陽が昇り、少しずつ気温が上がっていく。普段冬の山の登りは、薄手のシャツに薄手のジャケットを合わせることが多いが、今日はジャケットを外して問題ないくらいだった。

大品山を過ぎて、独標に向けて登っていく。大品山、1,550m地点、独標と段々状に標高を上げていくような感じ。この付近からようやく鍬崎山の頂上部がはっきり見えてくる。

うさぎも登っている。背景は立山連峰。

独標の手前から背後を振り返った。日本海までよく見渡せる。そろそろ春霞の季節となりそうだが、日中も遠くまでクリアな視界が続いていた。

独標から、鍬崎山。思いのほか足に疲労を感じて、ここからまだ標高を300m以上も上げないといけないという事実が重くのしかかる。

転がり落ちていきそうな傾斜の谷、その向こうに白山。

斜面の下部に立っていることを利用して、雪の造形をローアングルから撮る。その実態は、足の休憩時間の暇つぶし。

前日から天候が良かったようで、山の上の方でも樹氷のようなものはほとんど見られなかった。上部に来るほど日がダイレクトに当たって暖かく感じたので、それもそうだろうと思う。確実に冬は去り、春が迫っている。

立山駅から約4時間、鍬崎山の頂上に着いた。トレースは前日のものかと思っていたが、当日に先行者がいたようで2名が先着していた。広いように見える頂上部には、雪庇の部分もありそうで、あまり考えなしに歩き回ることはできなかった。山頂標の付近をうろつく。

立山連峰。劔岳は頭のところだけが見えている。立山連峰の前衛と呼ぶに相応しい景色だった。

西方向の眺め。白山や有峰湖を遠望する。前日夜にコンビニで調達したおにぎりと菓子パンを腹に入れて昼休憩とした。もう日帰り山行ではすっかりクッカーを持っていくことがなくなってしまった。重くて嵩張るからなぁ。

ズボズボと足を沈ませながら下界に戻っていく。立山連峰、劔岳のとんがりにも別れを告げる。登山者とスキーヤーに、それぞれ片手で数え切れるくらいの回数スライドした。

ぽたぽたと水滴が垂れてくると思ったら、いつ落ちてきてもおかしくない雪塊がトレース上に控えていた。時限爆弾のよう。

昼下がりのあわすのスキー場はさすがに賑わっていた。それどころか駐車場は満車となっていた。隣のらいちょうバレーは空いていそうだったので、思ったより人気のスキー場なのかもしれない。朝のひっそりとした感じからすると意外だった。

スキー場から立山駅まで早歩きして、なんとか14時発の列車に間に合った。ここから乗る乗客はやはり自分一人。古さに少し懐かしさを覚える車両だった。よく揺れたが、気付いたらうとうとしてしまっていた。

舟橋村という物凄く小さくて逆に目立つ村にある温泉施設で汗を流し、駅まで向かう道中。北アルプスは本当に壁のように見えるのだなと、思わず足を止めた。ここまで晴れることは冬の間にそう多くはないだろう。鍬崎山はどれだろうと少し探してみたが、いまひとつ判然としなかった。

富山駅に戻り、前日夜に食べられなかった富山ブラックを食べに来た。Swarmのチェックイン履歴を見ると、同じ店に8年前と7年前も来ていた。8年。時間が経つのはなんと早いのだろう。というかこの店、よく残っていてくれた。富山ブラックは記憶の通り、そこまで美味しくないけれど時々食べたくなる味をしていた。

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