表紙画像: 笠帽子のてっぺんが見えてきた
去年は笠ヶ岳山荘が営業しておらず、別にそれがトリガーとなったわけではなくとも何となく笠ヶ岳は遠く、何度か登ろうかと思いかけることはあっても実際に足を運ぶことはなかった。その分昨年の北アルプスは北部南寄りと後立山連峰を歩いたので、今年こそは笠という気持ちがあった。もともとは6月頃の残雪期、まだ人も少ない時分がいいかと思っていたが、好天と週末のサイクルが合わず先送りされていた。関東甲信の梅雨明けとともにやってきた週末、北海道の疲れも無かったと言えば嘘になるが、晴天は逃せないと新穂高に進路を向けた。昔は梅雨明け十日とも言ったそうだが最近は梅雨明け二~三日といったくらいで、だからこそ一番天気の安定した夏山日和を逃す手はない。
金夜は諏訪を越して松本までナイト・ツアー。首都高の渋滞を避けて外環・環八から調布まで抜ける下道ルートを検証したが時短には大した効果がなかった。(むしろ余計に時間を使ったかもしれない) 朝の国道158号線の混雑を避けたくて、眠りもそこそこに松本を発つ。何度か高速バスを追い抜いて新穂高に着くも、すでに駐車場は満車の案内が出ていた。二輪で良かったと思わされる。バイクに優しい登山口は良い、鳩待峠や夏期白山の別当出合など。
よく晴れた梅雨明け翌日の北アルプス。笠の出っ張りがよく見える。2日間であの頂上を目指す。新穂高の登山指導センターは登山者で賑わい、今回コンパスで出していなかったので自分もここで登山届を提出した。
小池新道入り口まで左俣林道をじっくり歩く。そのうち太陽が東側の稜線を跨いで登ってきて、眩しさと暑さに汗が止まらない。1泊と言えどザックはそれなりに重たい。(12~15キロくらい?)
わさび平小屋
まだまだ雲ひとつない青空
鏡平方面へ遮蔽物のない登山道
鏡池
鏡平山荘では"氷"の文字に心躍る
メロンをいただいた。ここで文字通り(本当に文字通り!)生き返る。
やっとこさ稜線にたどり着いて、槍穂が飛び込んできた
明日目指す笠ヶ岳方面には背を向けて
この日は双六小屋に拠点を置く行程。鷲羽岳の下に双六小屋の屋根が見えてきた。連休前までは予約なしでテント場を使えるということで、それは争奪戦になるのではと少し足が早まっていた。
槍に続く鎌たち
小屋が近付いてきた。クロユリは小屋付近のみ。
到着。テントは17番目だった。そこまで早い時間に出たわけでもなく、この順番はなかなかのものだろう。テント場料金は2,000円。耳を疑う金額設定だが、まあ仕方ない、か。水は料金に含まれ、トイレは含まれていない。
双六池の見える位置に張った。(あとで人が増えてきて双六池はほとんど見えなくなった) しかし、2,000円かあ。
徐々に雲が湧き立ってくる
北部南寄りの山々。去年は雲の多い時間帯にしか歩けず、若干の見覚えはありつつも実際はとても新鮮で目がずっと楽しかった。
乗鞍方面から上がった夏の雲が少しずつ笠に迫ってくる
双六岳頂上から、滑走路のような台地と槍の風景
北部南寄り、三俣蓮華岳に鷲羽岳、水晶岳、野口五郎岳。こちらもよく晴れている。来年は烏帽子岳からぐるっと時計回りに赤牛岳まで歩きたい。
遠く笠のシルエット
こちらは背後に穂高連峰
せっかくなので東側も樅沢岳まで足を延ばした。西鎌尾根が穂先までぐんぐん伸びている。秋の槍ヶ岳はどういうルートで登ろうか。
北鎌尾根
午後深くまで空は持ちこたえ、16時頃に初めて太陽光は遮られた
北海道で買って結局食べる機会のなかったセイコマのカレー麺をここで消費し、つい1週間前は北の大地にいたのだなと感慨。午後曇るも幸い雨も雷もなく、静かに双六の夜は過ぎていった。結局テント場は大盛況で、かなり詰め合って使うことになった。夜露で撤収に時間がかかり、翌朝は4時少し前に出発。
空が白んできた
弓折岳付近で太陽が稜線を越え、背中から日が射す
またいい天気になりそうだ
東側斜面を数え切れないくらいにコバイケイソウが彩る
笠はまだまだ遠い
抜戸岳に至るまで雪渓越えは2~3箇所、大した難度はなくステップもしっかりしていた。このあたりで笠ヶ岳山荘から下ってきたパーティとすれ違い始める。
弓折岳から歩く稜線ルートは(笠新道に比べて)平易と聞いていたものの、アップダウンの繰り返しと重いザックがそれなりの負荷となり、実際はそこまで楽ということもない。
抜戸岳の手前、ようやく笠の雄姿が目の前に迫る。右肩には白山、あちらも天気が良さそう。
抜戸岳に立つ。三角点は少し北寄りにあり、見落としかけた。
頂上へ最後の一踏ん張りがまたなかなかしんどい。稜線美を言い訳に、撮影目的と称して何度も足を止める。
帰りに反対側から見たらサヨナラの文字があった
山荘で少し息を整え、そのまま頂上に到達。タイミングよく、自分一人だけだった。ガスが上る前に着いて、360度遮るものはない。ここが(県境を除いて)岐阜県で一番高いところ。西に白山、南にクリヤ谷から御嶽山、東に富士・槍穂、北に剱岳まで山岳展望をほしいままにする。
美しい
薬師岳、立山、剱岳
全方位の眺めを心ゆくまで楽しんで、残りの行程のために笠ヶ岳山荘でエネルギー補給。ジュースはよく冷えていた(曰く、半分凍ったのとよく冷えたのどちらがいいですか)。トイレと水とジュースで1,200円。高い。(トイレが一番高い) 昼食はチリトマト麺にした。
下りは笠新道。この炎天下、上りで歩いたらすぐに病気になってしまいそうだなと、下りでもヘロヘロになりながら一歩ずつ標高を落としていく。稜線から杓子平までもなかなか楽ではない。(直射日光が何より厳しい)
杓子平で撮った稜線の次が笠新道入口の写真(登山者がふつうに写っている)で、本当に黙々と下りたのだなと振り返る。GPSを何度も出してどれくらい進んだか、残りどれくらいかと確かめながら歩いていた(非効率的だった)。それくらい、精神的にクる道だった。夏の日中に上りでここを歩く人は冗談抜きに凄い。
下界、林道の日向部分は地獄
新穂高で下山届を出して、先程まで自分がいた笠の稜線を見遣る。夏の積雲がぐんぐんと山体に纏わりつき始めていた。梅雨明け二日はやはり天候よく、美しい夏の北アルプスだった。温泉を探し(去年までそこまで欲していなかったのにとかく今年は執心)、ひがくの湯にバイクを向ける。
露天風呂オンリーとは珍しいひがくの湯。登山帰りの人で賑わっており若干顔をしかめたくなるが、登山センター隣接のところに比べればマシだろう。湯上がりには飛騨牛カレーとコロッケ。前夜にカレー麺を食べたばかりなのに、SA然りこういうところでは気が付けばカレーを頼んでいる。
ひがくの湯の建物を出るとまさに丁度のタイミングでゲリラ豪雨が落ち始め、湯上がりに火照った体を冷ますには半袖でバイクを飛ばすのが一番なのに、と不満顔で雨具を羽織らされる。ブーツカバーまで付ければ最強の装備で、どんなゲリラ豪雨でも浸水はしない。むしろバチバチと当たる雨粒の感触が楽しい。栃尾で国道に戻る頃には雨雲を交わし、服と車体に付いた水滴が風で飛ばされていくのが少しだけ気持ちいい。(雨具は多少なりムレてその不快感があるので、"少しだけ") 上高地周辺に雨雲は居座るようだったので雨具は松本から中央道に乗ってもしばらく着続け、眠気を感じて停まった原PAでようやく脱いだ。
日の長さと渋滞解消の時間には相関がありそうで、秋冬ならもう渋滞解消しているのではという時間に粘り強く小仏トンネルの渋滞が尾を引いている。核心部はやはり山手トンネルの灼熱。疲れ果てて帰宅し、翌朝ちゃんと出社するのだから自分は偉い。
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