2021年夏 北海道(斜里岳・大雪山・十勝岳)


表紙画像: 清里町ストレートロード再訪

社会人になったら北海道へ行くことは難しいだろうなと冷めた気持ちが優勢だったから、それが逆に券を抑えてからは何が何でも行こうというモチベーションになっていた(年末年始の九州行きを断念したのも背景にある)。長距離フェリーはとにかく時間がかかる。夏休みも、あってないようなものなので定められた日数全てを取れるはずがなく、おそらく許容最大限だろうという3.5日をここで投下して、もう2ヶ月も前から休むぞと宣誓をした上で時が来るのを待った。直前にややこしい案件が入ったのは仕方なく、業務PCを持っていかざるを得なかった。金曜はやや怒り気味に昼過ぎに切り上げて会社を去った。

3.5日の休みと2日間の週末を足し合わせて、ようやく道内丸3日(3泊4日)が稼ぎ出せる。3日であれもこれもは出来ないというのはよく分かっており、ある程度は割り切って考えるしかない。幸い、走りたい道は過去に大体走っている。当然の流れだが、今回は山をベースに組むことにした。北海道には過去2度上陸しているが(16年夏、18年夏)、今回は初めて大洗から船に乗ることにした。首都圏から近く、夕方に出港するダイヤがあるのも都合が良かった(半休の後に間に合う)。

常磐道で豪雨に打たれ、ムレる雨具をはためかせながら大洗に到着。大洗で雨は止んだ。すでに時間的余裕はそこまでなく、ウロウロしているうちに乗船の案内が流れそうだったので船体を眺めに行くのは諦めた。ほぼ予約開始と同時にチケットを取ったので金夜の混み具合というのが想像できなかったが、想像以上に車とバイクが多く並んでいた。


口を開けるさんふらわあ

乗った。直前までタイヤ交換に出していたので、大洗までの高速走行がちょうど慣らしのような感じになった。真後ろでラッシング前のバイクが転倒(ドミノ倒し)するアクシデントが起きており、ちょっとイヤな空気が流れていた。いそいそと個室に移動。

夕暮れの大洗港

出港前からレストランが営業しており、早めに夕飯にすることにした。ハンバーグ基調のバイキングだったが、他にも何かあるだろうと皿のメインエリアを空けていたらハンバーグで終わってしまったので結局載せるものがなく、間抜けな載せ方になってしまった。

個室(シングルスーペリア)は快適。電波が入らないので仕事の状況に不安覚えつつも夜は明け、曇天の中を船は進む。

さんふらわあは定刻に苫小牧着。綱取りの車が可愛くて写真を撮ってしまった。苫小牧は小雨がぱらついており、過去2度の北海道のことを思い出す。台風の少ない北海道で非常に珍しい上陸に遭遇したり豪雨が続いたりと、天候面では散々だった。(北海道の山では一度も晴天だったことがない。それは残念ながら今回を経ても変わらなかった)

苫小牧に13時過ぎに放り出されてもこれが扱いに困るもので、他の人はみなどこへ向かうのだろうと気になる。数日間の地上天気図を見て、まあもう何でもいいだろうと少しやけになり、頭の片隅にあった好天プランで進めることにした。即ち、初日は苫小牧から一気に北見へ移動。わざわざ北海道に来て高速を使うのも苦しいなと思いつつ、追分から池田までワープした。ずっと天気は悪く、帯広周辺は濃霧。道東道を降りてからは本別、足寄とふるさと銀河線の道を進み、ようやく陸別の先で太陽が見えた。

夕暮れの牧場。ああ、北海道だなぁとしみじみ思わされる。車は一台も付近を通らず、静かに空の色が変わっていくのを見る、時間にして十数分あろうかというこれだけでこの日は充分だったという気になる。

道内(正式)1日目は斜里岳。因縁の、斜里岳。3年前の夏、晴れた日に登ろうとして断念した山。不服なので敢えて詳細を掘り返すことはしないが、なにか引っ掛かる気持ちもあり、早く登ってしまっておきたい山だった。

行きは旧道の沢コース。軽い沢登りが続く。駐車場に停まっていた数ほど人を抜かさないので、新道から登る人が多いのだろうか。

ウコンウツギ

Google Lensいわく、セイヨウオダマキ?

ガスの頂上に到着。あの日登れていれば晴天の景色が見れたろうに。しかしこれで雪辱は果たせた。

帰りは新道、尾根道を歩いていく。少し標高を落とすとガス帯を抜けて、斜里町の方の景色が見えてきた。ヒグマ多い道内山域、しかし今年に入って斜里岳では目撃、痕跡の報告は無いとのこと。

下界はよく晴れていた。が、この日の道内晴天域は斜里から網走にかけての沿岸部のみ。山をテーマに来ていて、山が晴れないのならどうしようもないが、日程ありきでしか来れない以上ここも割り切るしかない。

清岳荘までの道は数キロのダート区間を含む。オフローダーで良かったと思うところ(タイヤはオン用だが)。晴れ間が出れば流石に暑く、清里のセイコーマートまで下りてハスカップのアイスを食べた。

お気に入り?の清里町ストレートロード。斜里には"天まで続く道"と呼ばれるスポットもあるが、あちらは有名になりすぎて巨大な観光バスが平気で入ってきたり(あまりにも似つかわしくない)、訪問者が途絶えなかったり、一度行けば充分な場所になっている。こちらは静かでとても良い。道の先がオホーツク海に消えていくのもいい。

付近(片道十数キロは走る)にあるさくらの滝も訪れた。7月は鮭の遡上のシーズンで、本当にひっきりなしに鮭が飛び跳ねていた。数mはあろうかという大滝を何匹もの鮭がぴょんぴょん飛び越えようとする(実際には飛び越えることはできない)姿には目を奪われる。今回の道内紀行で数少ない新たな良き発見だった。

何より手持ちの時間が少ないので、行くところに行ったらもう腹を決めて移動しないといけない。ライブカメラを見て美幌峠もそこまで好天でないことを確認し、もう最短距離で旭川まで動くことにした。それでもまた数百キロの移動。一体何をしているのかと思わなくもないがあくまで今回のテーマは山。北浜駅の線路風景だけ見納めて石北峠へ走らせた。

天気良ければどこかでキャンプを、と幕営用具を一式持ってきていたが、連日の天気予報を見てついに活躍の場はなさそうだった。(地上天気図はぼちぼちといった感じだったが、高層に湿った空気が入っていたらしい) 道内2日目は大雪山。午前中に晴れ間が見えるかもとヤマテンが言うので、僅かな期待を胸にロープウェイ営業開始前から入山した。(ロープウェイに沿って姿見まで歩くことができる) 他に徒歩入山者は居なかった。


結局ガスは晴れることはなく、うすぼんやりと周囲の山々が見えるのみだった。大雪山旭岳そのものの荒涼とした体付きもあまり明瞭には見えず、修行の装いが強い登山だった。ロープウェイが動く前に登ったおかげですれ違う人が少ないのは良かったが、早朝の姿見周辺は信じられないほど蚊が多く、鬱陶しかった。

この日もガスの頂上。北鎮岳方面へ周って下りようかという計画は放棄し、ピストンで姿見に帰ることにした。

ガスでは撮れ高なく、何かそれっぽい写真をと思って色々試行錯誤して撮ってもあまりハッとするものは残らない

姿見でコロッケを食べて下山。帰りはロープウェイを使った。

洗濯の必要があったのでこの日は宿を取り、時間稼ぎに美瑛の丘巡りにバイクを向けた。初めて北海道に来た5年前の夏に一通り周ったのでどこも再訪ではあったが、パッチワークの丘の一帯はやはり走って楽しいものだった。顕著すぎるほど、札幌ナンバーのレンタカーが多い。

親子の木

富良野の温泉宿はとても良かった。洗濯、入浴に加えて併設のレストランの使い勝手も良かった。

道内3日目、最終日。望岳台から十勝岳へのピストン登山となった。


低層のガスを抜けると青空が見えてきて、これはもしやと期待するも残念ながら稜線には別のガスが横たわり、3日通じて消化不良の登山が途切れることはなかった。

ガスの中の頂上。利尻から始まって道内の山はこれで9つ目。晴れた山はそのうち1つもない。

夕方のフェリー出港までに苫小牧へ戻る必要があり、登山をしてからでは流石に襟裳岬周りは難しく、占冠、日高から直線的に降りていくルートとした。

平取周辺で寄り道し、サラブレッド牧場の点在する道を走った。こういう景色もまた北海道っぽい。ウマ娘のおかげでビッグレッドファームなんかは混んでいることだろう。3年前に行っておいて良かった。(当時はゴールドシップに加えてグラスワンダーも放牧されていた)

あっさりと、あまりにもあっさりと道内3泊4日は完結し、バイクには大洗行の札が付けられた。職場用に白い恋人とマルセイバターサンドを購入して出港を待つ。まだ夏休み前、平日ということもありガラガラなのではとさえ思っていたからバイクの多さ、満室との報には驚いた。

今度は上手く載せられた

大洗に着くまでが北海道です

さんふらわあ朝ごはん。朝からカレーとは如何に? (夕飯のメニューには無い)

当面(向こう数年)は北海道に行くとしても毎回こんな感じになるだろうと思っている。山をテーマにする以外になく、登るべき山が多い(天塩岳、トムラウシ、ニペソツ、暑寒別岳etc)。道やそれ以外の場所はその合間合間で狙っていくことになるのだろう。航路も変えてみてもいいかもしれない。(首都圏発だとせいぜい新潟か仙台を考えるくらいだが) 
セイコーマートのアイスクリームは大体どれも美味しかった、ポジティブな印象が残っているなと途中で思い、それはアイスクリームを食べたくなるのは晴天の日で、晴天の北海道は楽しいに決まっているからだと納得した。今回も(山は散々だったが)一部で晴れ間が出てきたところは、漏れなく良い夏の北海道だった。陸別の太陽、清里町の晴れ、最終日十勝岳を下りたあとの南富良野の青空。晴れない北海道の山に終止符を打ってくれるのは一体どこになろうか。

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