四阿山


まとめておかないと永遠に記録を残さないことになりそうなので、少しでも覚えているうちに殴り書いておこう。2月最初の週末は土曜の甲信越の天気がよく、日曜は冬型とのことだった。さてどう扱うものか、日帰りか金夜発の前夜泊で良さそうなところかと見当をつけ、上信越国境に候補を絞った。北アルプス・頸城方面は風が強く、南東北は悪天との予報だった。
上信越の山々というと、冬期に登りやすい筆頭は谷川岳、あとは志賀高原の方と四阿山、浅間山は風が強くて厳しいだろうが黒斑山などその周辺の山域、といったところが候補に挙がる。二輪で登山口まで行けない以上頼れるのは公共交通機関のみとなり、行き帰りの接続も考えなければならない。前夜泊か日帰りで登れて、そこそこ達成感があり、アクセスも悪くない山となると谷川岳か四阿山か。もともと谷川岳は3月に行こうと思っていたこともあり、今回の条件でふっと候補に出てきた四阿山の縁を選んだ。

四阿山は無雪期に一度登っている。10月下旬の、冬迫る寒い週末だった。前日に西黒尾根を歩き、菅平のペンションで一泊、翌朝早くに菅平牧場から根子岳とあわせて縦走した。今回も同じ菅平牧場から歩くことにした。冬期の主流ルートはあずまや高原ホテルからの往復であろうが、バスが入る最奥地点のダボスからはかなり距離がある。マイカーかタクシーでないと厳しい。菅平牧場ならばダボスから3キロ程度だ。そうは言っても往復で6キロ余計に歩かないといけないので、それは冬の山らしい。


土曜朝は上田に停まる最初の新幹線に乗った。上越方面ばかりかと思いきや、板を持った乗客が多い。例年に比べれば遥かに少ないのだろうが、ちょうど窓側が埋まるくらいの混み具合。車窓に赤城山、足尾と山並みが流れていく。高崎手前から武尊山、谷川方面と映る山の白さが増していった。朝方の荒天予報も良いほうに傾いたみたいだった。
雲一つない白い浅間山を確認し、うつらうつらしていたらすぐに上田に到着。上田駅前からは路線バスに乗る。冬場も1時間に1本程度のペースで菅平方面へのバスが出ていて、とてもありがたい。路線バスなので市街地のバス停を律儀に数えていくが、実質的には菅平と上田駅のシャトルバスである。中間区間の利用者はほとんどいない。車内は板で少し窮屈。菅平まで約1時間、運賃はわずかに500円。

ダボスでバスを降り、この時点で朝9時過ぎだった。勝手知ったる、というほど覚えているわけでもなく、GPSでルートを確かめながら歩いた。牧場までの道はいやらしいほど真っ直ぐで、ところどころ凍結があり歩きにくい。


バス停直後、一旦明治大の敷地内を通過する。通行時間の制限がかけられているが、最悪車道で迂回できるので問題ない。むしろ一部箇所が深雪で歩きにくく、最初から車道を歩くのでもいいかもしれない。近くによく吠える犬がいる。


何の足跡だろう


牧場まで気が遠くなる直線路


振り返れば北アルプス


登山口に着く頃にはあっさり1時間が経っていた。根子岳直登と四阿山ルートがここで分岐する。登山届を出して、右へ。無雪期縦走は根子岳から四阿山へと歩いたので、中四阿経由の登りは今回が初となる。中四阿方面への入り口は看板が出ていて分かりやすいが、その後牧場脇のトレースが少し夏道と異なっていて、やや手探りのようにして歩く。無事にルートの見当をつけられ、徐々に登山道は牧場柵から離れていった。雪が深いが何とかつぼ足で踏ん張る。


足跡ばかりで実体を見られない冬の動物たち


先行者のおかげである程度は固まっていたが、1キロ弱歩いてさすがに耐えきれずワカンを引っ張り出した


樹林帯を黙々と歩くと意外に早く視界が開ける


根子岳の南東面


小四阿山・中四阿山と小ピークを2つ越えて"本"四阿山の頂へと道が続いていく。途中の両ピーク周辺がルート上珍しい要注意箇所か。切れ落ちた狭いリッジ状になっているものの、しっかりトレースは残っているのでこの視界ではリスクはほとんどない。中四阿山の登り返しはすでに6キロ歩いてきた身からするとなかなかげんなりするものではある。その後ようやく四阿山の頂上が見えてきた。


雪は深いが樹氷は発達していなかった


頂上手前からラストの直登を振り返る


山頂には13時半過ぎに着いた。ここまで時間がかかったのは誤算で、狙いを定めていた帰りのバスにはすでに黄信号であった。待ち時間それほどなく後発のバスが来るのが幸い。時間配分は他の山ではもっと丁寧に計画しないといけない。
眺望は申し分なし。予報通りの好天で、見えるべき山はきちんと全て見えているようであった。先月の天狗岳のように黄砂、霞もなく昼過ぎにしては充分過ぎる見通しであった。さすがに道中より風は強く、樹林帯の暑さでバラクラバ、帽子を外していたのが堪えた。ここまでも見え続けていた北アルプスが槍穂、乗鞍方面まで身を広げ、そこからすぐ隣に御嶽山、さらに隣に中央アルプス、隣に南アルプス、と目まぐるしい。南東から北東側も然り。谷川方面は白さの次元が一段違う。無雪期縦走はお世辞にもいい天気とは言えず、頂上でわずかにガスが晴れて麓の嬬恋村が少し見えたかどうかという程度であった。天候の悪かった百名山を冬に踏み直すというのは悪くない試みかもしれない。


嬬恋村方面に下りるトレースはない


樹林と浅間山


後立山連峰と頸城山塊を眺めながらカレー麺


氷柱落としが楽しい


単に夏と比べて登りに時間を要するということなのだろうが、冬は下りでびっくりするほど時間を稼げる。中四阿、小四阿もさくさくと歩き終え、あっさりと牧場に戻ってきた。冬至から1か月経ったと言えまだまだ日は短い。すっかり影が伸びていた。


ここも明治大構内


日没直前にダボス帰着、帰りのバスは空いていた

バス便が1つ後ろになったこともあり戸倉温泉は断念、その代わりにグリーン車で帰ってきた

以上


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