那須岳

3月折り返しの日曜日、本当は赤城の黒檜山に行こうと思っていた。やたらに暖かい日が続いたので流石にあの凍結はなくなっているだろうし、前橋の天気予報も良好だった。しかし前日に大沼のライブカメラやYAMAPのルポを覗くと山の白色が既に相当失われているようで、少し意思を削がれてしまった。
(土曜日は都心部でも大粒の雪が舞っていたので、結局また色を戻したのかもしれない。)

地図と天気予報を睨み、急遽ではあるが那須に行くことにした。理由は: 
・ロープウェイ再開前最後の週末で多分それほど混んでいない
・春分の連休に日帰り上等の那須を充てるのは何か気がひける
・てんきとくらすがAと言っている。

那須は早いうちから冬に歩くべき山として認知していたが、一方で先人の教えは「3月の移動性高気圧を待つべし」とも言っており、ずるずる後回しにされてきた。どうも1~2月は人が飛ぶ風が吹くらしい。
3月のどこかしらで行くにしても次の週とその次の週は連日で残しておきたく、1日でも晴れそうなら行ってしまおうというのが決め手だった。


朝、久しぶりにしっかり早起きして東北道を北上する。空は青いのに羽生から鹿沼辺りまでずっと霧が濃い。宇都宮インター手前で「事故通行止 ここで降りよ」という表示が出てきてびっくりしたものの、視認できるのが遅かったので為す術なく走行続けた。矢板インター手前で7~8台が無残に立ち往生している事故現場を通り、ゾッとした。後で橋梁の凍結が追い越し時にスピンさせたとの噂(?)を耳にし、さらに背筋が凍った。

高速は西那須野塩原で降りた。国道400号を県境方面へ直進する車が多いのはスキーやスノーボードの客だろうか。県道を走っていると薄く雪の残る畑や白っぽく色付いた丘が目に入る。前日の雪か。斜め向こうの那須連山は雲を横につけており、少し嫌な予感がする。県道は大丸までほとんど危険箇所なく、駐車場手前の短い凍結に一瞬たじろぐだけだった。

大丸の広い駐車場はしかし大半が傾斜地で、平坦ではあるが登山口まで一番遠いところを渋々選んだ。山側は案の定雲がかかっているが、歩き出す他ない。今日も行動飲食を準備するのを忘れていた。幸い自動販売機が動いており、ミネラルウォーターを2本だけ買って軽いザックに放り込んだ。



歩き始めからそこそこ雪があるが、峠の茶屋までは何も付けず歩いた。翌週にロープウェイが営業再開すればここまで車で入れるようになる。峠の茶屋の先からは雪が一層厚くなり、迷ったがアイゼンを付けた。半分より少し上くらいまで雪に埋まった那須神社の鳥居を体を屈めて通り抜ける。樹林内を歩く区間は短い。峰の茶屋跡まで視界が開けるところで足元の雪が一時的に減るのは、風の通り道で雪が吹き飛ばされているものだろう。


山肌に取り付いた谷の上の道は右に朝日岳、左に茶臼岳を見て、さらに後ろを振り返ると平野部の眺めもとてもいい。歩いているうちに連山にかかる雲は減っていた。茶屋跡手前からまた雪が戻り、長めのトラバースはゆっくり渡る。ふと前日の降雪で雪崩の起きやすい環境になっているのではと思い当たるが、上を見ても雪は締まっていて安心した。

まずは茶臼岳へ。峰の茶屋跡からは岩と雪が半々、さほど距離はないものの歩きにくいので時間がかかる。荒涼と広がっており、パッと見どこを歩くのが正解か判然としない。辿り着いた頂上にはちょうど誰もおらず、火口をゆっくり周回した。茶屋跡までの帰り道で大勢の登山者とすれ違う。良いタイミングで登れた。

茶屋跡のジャンクションを直進し(右折で登山口に戻る)、朝日岳方面へ進んだ。トレースが途端に心許なくなる。加えて傾斜のあるトラバース、岩肌をなぞる鎖場とスリルある道が続く。相変わらず岩を踏んでアイゼンをがちゃがちゃ言わせてしまうのが辛い。朝日岳分岐に着くとちょうど数組のパーティが朝日岳に入るところで、まず三本槍岳を攻め朝日岳は帰りに登ることにした。



朝日岳分岐の先、1,900mピークまで標高を上げたあと再び標高を落とす。この先が厄介で、木道の先の雪原で完全にトレースを見失ってしまった。快晴に近くなっており、目標とすべき三本槍岳がはっきり見えていたのが幸いだった。道なき道を選べるのは冬山の特権とは思いつつも、時折雪を踏み抜いてバランスを崩しては恥ずかしくなる。ストックは持っていたがこの前の北横岳で片方が壊れてしまったようで、片方だけで使う気にもなれない(安かろう悪かろうだ)。



三本槍岳手前の斜面入口で本流のトレースに合流した。かなり疲労が溜まっていた。ここまで食事無しなのも堪えている(実はときどき雪を軽く口に含んで誤魔化していた)。いざ、三本槍の頂上に立つと、北には猪苗代湖や磐梯山が見えた。西・南の尾瀬方面や中越の豪雪地帯が眩しく、甚く感動する。茶臼岳と2mの差で、那須連山の盟主として立っている。山頂の標の海老の尻尾はとても立派で、かたくへばりついていて簡単には剥がせない。


行きにアップダウンが多かったのが帰りにとても苦しく、下山のはずなのに全然足が進まない。雪原で見失ったトレースは帰路も同じだった。結局自分の踏み跡を探しながら歩いた。1,900mピークまでの再登坂は傾斜がきつく、心が折れそうになる。ハンガーノック手前ではとも思えた。若さだけを原資に朝日岳も登った。荒れた岩肌をクライミングで登ってきた人と山頂で鉢合わせし、驚く。

15時を回った頃から茶臼岳上空に厚めの雲が広がり、ゆっくり歩いて峰の茶屋跡に戻ったときには雪がぱらつき始めた。一時の晴天を掴めたのは幸運に尽きる。16時頃にようやく大丸に戻る。実に7時間半、ミネラルウォーター(と少しの雪)だけで乗り越えた。帰り、一先ず矢板まで東北道で上り、矢板からは急ぐ必要も無かったので4号線をのんびり流した。新4号BPを走るのは4年前の夏以来だ。無性に懐かしい。20時台には東京帰着。濃密な一日であった。


那須岳(那須連山)

天候: 曇り→晴れ→曇り(雪)
ルート: 大丸→峠の茶屋→峰の茶屋跡→茶臼岳→峰の茶屋跡→朝日岳分岐→三本槍岳→朝日岳分岐→朝日岳→峰の茶屋跡→峠の茶屋→大丸
タイム: 大丸→茶臼岳 2時間 茶臼岳→三本槍岳 2時間20分 三本槍岳→朝日岳 1時間15分 朝日岳→大丸 1時間30分
積雪: ルート全体にあり。トレースあり。朝日岳→三本槍岳間の雪原はルート見失いやすい。
装備: アイゼン/ストックほか(ストック使用せず)。

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月末の休暇は自粛要請と悪天候を見て1日だけ取ることにした。忙しい日が続いていたので、眠っていたら終わってしまった。一番行きたかった春の能登に行けない。荒島岳も断念せざるを得ない。これからどうなることやら。


榛名山(掃部ヶ岳)☑
赤城山(地蔵岳)☑
金峰山☑
北横岳(北八ヶ岳)☑
赤城山(黒檜山)✗ (また次の冬へ)
那須岳☑
磐梯山
荒島岳✗
火打山・妙高山
白砂山
岩手山・秋田駒ヶ岳
鳳凰山
平ヶ岳・浅草岳・守門岳
空木岳・木曽駒ヶ岳
聖岳・赤石岳
白山・薬師岳
飯豊山
小蓮華岳・白馬岳
甲斐駒ヶ岳・仙丈ヶ岳
瑞牆山・金峰山(?)
丹沢
両神山

いくつか順番を入れ替えた。

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